「変貌するアジアの鉄道」 柿崎一郎 成山堂書店 2025年3月
2021年12月にラオスのビエンチャンから中国との国境ボーテンを経由して中国のモーハンへの路線が開通した。タイのノンカイから対岸のターナーレンへの鉄道はすでに開通(2009年)していた。そして2024年にはビェンチャン郊外のカムサワートまで延伸された。乗り継げばシンガポールからポルトガルまで鉄路で移動する可能性が見えてきたのである。かつてのシベリア鉄道に比肩する雄大なスケールである。知られることの少ないラオスの鉄道に関する情報を本書から紹介しよう。
(ラオス鉄道)ラオスは鉄道のない国であった。然し、オーストラリアの支援でノンカイと対岸を結ぶメコン川橋梁(タイ・ラオス友好橋)が1994年開通すると、タイの鉄道をラオスに伸ばす計画が浮上し、ノンカイ~ターナレーン間3.5キロが建設され、2009年に開通した。ラオス初めての鉄道となった。運航のためにラオス国鉄が設立された。列車の運行は、当初タイ側からのみで、車両は保有していなかった。その後、ターナーレンからビェンチャン郊外のカムサワート(ビェンチャン中心部より6.5キロ東)までの7.5キロが開通した(2024年)。これまでノンカイ~ターナレーン間で運行されていた国際列車に代えてバンコク~ビェンチャン間の直行列車の運行が開始された。タイの出国はノンカイ駅のホームのはずれにあるゲートで行われる。バンコクからの乗客も、荷物をすべて持って下車し出国審査へ。その間に列車はホーム北端、ゲートの向こう側に移動している。ラオス入国はカムサワートの改札で行われる。改札が入国審査のゲートになっている。入国カードはここで書く。列車内には用意されていない。なおこの鉄道のビェンチャン駅(ビェンチャン中央駅)はラオス中国鉄道のビェンチャン駅とは別で相当離れており、両駅間はバスで結ばれている。
(ラオス中国鉄道)2021年12月4日ビェンチャンと中国との国境ボーテンを結ぶラオス中国鉄道が開通した。総延長422キロ。当初は高速鉄道として計画されたが、実際は最高速度160キロの標準軌、単線、電化の中速鉄道である。同時に中北国内の玉渓(ユーシー)~磨憨の玉磨線も開通し、ラオスと中国を結ぶ国際線としてデビューした。運営は中国とラオスが設立した合弁会社ラオス中国鉄道が行っているが、実態は完全に中国の鉄道である。電化方式も中国と同じ交流2.5万ボルト、レールも中国同様標準軌である。この列車の駅(ビェンチャン駅)は市街中心部から北東に15.2キロ離れた郊外サイ村に位置している。車で40分もかかる。駅舎は中国式の壮大な建物だが、大半は待合室である。急行列車(瀾滄号)は中国の高速列車復興号型(CR200型)で、ビェンチャン~ボーテン間を3時間半で結び、2023年にはビェンチャン~昆明を9時間半で結ぶ国際列車の運行を開始した。この鉄道によってビェンチャンと沿線の町との所用時間が大幅に短縮された。例えば古都ルアンパバーンは従来バスで10時間ほどかかったが、僅か2時間で到達できる。現在この間は区間列車が1日3本運行されている。なおビエンチャン~ボーテン間は2往復、ビエンチャン~昆明間は2往復している。
ラオス中国鉄道の旅客運送は順調に推移しているが、本来の役割は貨物輸送である。タイから延伸されたメートル軌のラオス鉄道のターナレーンには内陸港(ドライポート)が建設された。一方ラオス中国鉄道は終点ビェンチャン南駅(貨物駅)から引き込み線をドライポートまで整備し、2022年7月から運用を始めた。タイから来るメートル軌の列車と中国から来る標準軌の列車を並べて、相互にコンテナの積み替えができるようになった。すなわち、事実上シンガポールと昆明が鉄道で結ばれたのである。2023年2月には昆明からバンコクに向けて初の「直通」列車が運行された。タイではこの鉄道が、中国への新たな輸出ルートとして注目されている。