2012年4月1日日曜日

「震災と原発 国家の過ち 文学で読み解く『3・11』」 外岡秀俊 朝日新聞出版 2012年

著者が「北帰行」により1976年度(第13回)文藝賞を受賞したのは東大在学中の23歳である。
その将来を嘱望されたが、朝日新聞社に入社し企業内ジャーナリストとしての道を歩んだ。58歳
で早期退職するその直前に「東日本大震災」が発生した。
著者は退職後自前で被災地を広く取材したが、その不条理の光景はすべて文学作品に描かれて
いたものであった。たとえば2章の南相馬の現実。カフカの「城」の「ダブルバインド」そのものである。著者は「城」を思わず再読したというが、私も読み返したくなった。
本書はフリーになった著者ならの作品であり、著者の今後に大いに期待したい。